家の屋根裏やベランダ、庭などで山盛りの野生動物のフンを見つけたことはありませんか?
もしかするとそれはハクビシンのためフンかもしれません。
ハクビシンによる最も深刻な被害の1つにフン害があります。ハクビシンのフン尿は天井のシミや悪臭、害虫の発生原因になります。そのままにしておくと天井が腐って抜け落ちる可能性もあり、大変危険です。
この記事では、ハクビシンのフンの特徴と対策・処理方法について解説します。ハクビシンのフンの特徴を理解し、早めに対処して被害を食い止めましょう。
ハクビシンのフンの特徴
色
ハクビシンは甘い果物や野菜、穀物、家庭ごみをとくに好んで食べますが、昆虫や鳥、鳥の卵なども食べる雑食性の動物です。そのため、フンの色は食べたものによって黄土色~こげ茶色と幅広く変化します。
大きさ・形
フンの大きさは5~15センチと小型犬のフンと同程度で、食べた果物や野菜の種子が多く含まれています。丸みを帯びた細長い形をしています。
におい
ハクビシンは果物をよく食べるため生臭さはありますが、においは弱めです。時にはフンから甘いにおいがすることもあります。
ただし尿は強烈なアンモニア臭を放ち、フンと同じ場所でするため悪臭が発生します。
ハクビシンはジャコウネコ科の動物ですが、なんとジャコウネコが食べたコーヒー豆のフンから作るコーヒーなるものが存在します。
その名も「コピ・ルアク」。以下の記事では、コピ・ルアクの歴史や香り、味わい、実際に提供しているお店などを紹介しています。
ハクビシンの習性「ためフン」
犬や猫はさまざまな場所で尿をするマーキングという習性がよく知られていますが、ハクビシンは同じ場所にフン尿をする習性があります。これは一カ所にフンが山盛りになることからためフンと呼ばれています。
ただし、ハクビシンのフンが必ずしもためフンであるとは限らず、巣や寝ぐら以外の場所ではあまり見つかりません。ハクビシンが通過した水のある場所では1回分のフンしか見つからないこともあります。
フンが見つかりやすい場所
ベランダ
ベランダにハクビシンのえさとなるものがあるとフンをされる可能性があります。えさになりそうなものはなるべく置かないようにしましょう。
庭
庭にかんきつ類の果樹を植えている家や家庭菜園をしている家は、ハクビシンの食害に注意してください。ハクビシンは甘い果物や野菜が好物です。庭の近くに巣を作り、食害した後にフンをする可能性があります。
天井(屋根裏)
ハクビシンは壁を垂直にのぼってわずかなすき間から天井に侵入し、フンをします。
本来ハクビシンのすみかは山林やほら穴ですが、近年住宅地にも出没するようになり、似た環境の屋根裏にすみつくケースが増えています。
屋根
ハクビシンは屋根の上から家屋に侵入してくることがあり、その場合は屋根でもフンが見つかります。屋根にある雨どいの近くにフンをされることも多いです。
ハクビシンが近くにいるか確かめる方法
ハクビシンが家の近くにいる可能性を確かめる方法として、水を入れた底の浅い容器を家の周辺に置く方法があります。容器にフンをされた場合は近くにハクビシンがいる可能性が高いです。
他の動物のフンとの見分け方
ハクビシンのフンは他の動物のフンともよく似ています。食べたものでフンの色が変わるため、ぱっと見では判別が難しいこともあります。
見分けるポイントとなる、 ① 形 ② 大きさ ③ におい ④ 含まれているもの ⑤ ためフンの習性の有無の5つの項目を表にまとめました。性別や個体によって差があるので総合的に判断してください。
① 形 | ② 大きさ | ③ におい | ④ 含まれているもの | ⑤ ためフン | |
---|---|---|---|---|---|
ハクビシン | 丸みを帯びた細長い形 | 5〜15センチ | 弱め (甘いにおい、生臭いにおいがすることも) | 果物 野菜の種子 | する |
アナグマ | やわらかい棒状 水分が多い 光沢がある | 5〜15センチ | やや強い | 大半が泥 場合によっては種子 | する |
アライグマ | 泥状や固形状 犬のフンに似ている | 5〜20センチ | 強い | 動物の骨 虫の身体の一部 種子など | しない |
イタチ | 細長く先がねじれた形 水分が多くしっとり | 5〜6センチ | 強烈 | 体毛 果物の種子など | しない |
タヌキ | 丸みを帯びている | 2〜3センチのフンがくっつき、5センチ以上になる | 強い | 果物の種子 虫の身体の一部など | する |
テン | 太くて長い 水分が多くしっとり | 約10センチ | 強い | 果物の種子 木の実 体毛など | する (大量) |
ネコ | 直径約2センチ 丸い形 または成人の指ほどの棒状 | 棒状の場合は約5センチ | 強い | 場合によっては虫の身体の一部 | しない |
以下の記事に獣のフン一覧を紹介しています。見分ける際の参考にしてください。
また、近くで野生動物や野生動物の足あと、食害の痕跡などを見つけた場合はより正確に判断できます。ハクビシンの見た目や痕跡の特徴については、以下の記事を参考にしてください。
ハクビシンによる4つの代表的なフン害
① 天井のシミ
ハクビシンはフンと一緒に尿をする習性があるため、天井にシミができることがあります。放っておくと床板が腐敗し、最悪の場合では天井が抜け落ちる可能性があります。
天井の壁から遠い場所にシミが現れている場合は危険なので早急に駆除業者へ依頼してください。
② 悪臭
ハクビシンのフンや尿を放っておくと雑菌やカビが繁殖して床板を侵食し、悪臭を放つようになります。部屋の中でにおいを感じた時にはすでに屋根裏はフン尿だらけになっている可能性があります。雑菌が繁殖しやすい梅雨から夏にかけての時期はとくに早めの対処が必要です。
時々、ハクビシンのフンに黒い人の髪の毛のようなものが生えている場合があります。くわしいことはまだ分かっていませんが、カビの一種だと言われています。
③ 害虫の発生
フンの放置は害虫の発生原因になります。野生動物のハクビシンは基本的にダニやノミを保有しています。ハクビシンが天井裏に侵入するとダニやノミが人を吸血するために室内へ拡散し、繁殖していきます。
ダニに刺されるとかゆみはもちろん、その死骸やフン、脱皮殻がアレルギー源となって喘息やアトピー性皮膚炎を引き起こす可能性があります。二の腕や腹部など肌のやわらかい部分を刺されることが多いため、子どもや女性はとくに注意が必要です。
他にもハエやゴキブリの発生源になったり、ためフンにウジ虫がわいたりすることがあります。
④ 感染症の危険
動物から人、人から動物へうつる感染症を人獣共通感染症(ズーノーシス)と言います。ハクビシンのフンからの感染事例はありませんが、接触やけがによって以下の人獣共通感染症を引き起こすおそれがあります。
接触感染する疾病 | 疥癬、皮膚糸状菌症、ツツガムシ病、レプトスピラ症など |
経口感染する疾病 | サルモネラ菌食中毒、カンピロバクター食中毒、エルシニア食中毒、 トキソプラズマ症、E型肝炎など |
ペットへの感染のおそれがある疾病 | ジステンパー、パルボウイルス感染症、アデノウイルス感染症など |
今後発生を注意すべき疾病 | 狂犬病、エキノコックス症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、 重症急性呼吸器症候群(SARS)など |
2002年に中国広東省で発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染源としてハクビシンが疑われましたが、現在はキクガシラコウモリが自然宿主だと考えられています。日本のハクビシンからSARSの病原体は見つかっていません。
また、感染事例はなくともフンは雑菌の温床であり、不衛生なことには違いありません。フン尿が乾燥して空気中に飛散すると吸い込んでしまう可能性があります。直接触ったりせず、正しい方法で処理してください。
ハクビシンのフンの処理方法
用意するもの
ハクビシンのフンは雑菌やダニの温床です。直接肌に触れないようにするため、作業を始める前に汚れてもいい長袖、長ズボンを用意してください。穴があいていたり破れたりしている服は適しません。以下のような使い捨てのつなぎが便利です。軽装で、作業が終わった後に廃棄できるものが適しています。
雑菌やダニが肌に触れないようにするだけでなく、場所や季節によっては暑い中での作業となるため、帽子を被るか頭にタオルを巻くようにしてください。
フンに直接触れないようにするため必ず装着してください。
フンやほこりを吸い込まないよう、必ず防護性の高いマスクを装着してください。風邪や花粉対策で着用する不織布マスクよりも顔への密着度や粉じんの捕集性能が高い防じんマスクが適しています。国家検定規格基準を満たす商品を選びましょう。
フンの微粒子やダストが目に入らないようにするために必要です。
フンを掃除するのに使います。掃除機だとフンがノズルなどに付着したり、吸い込まれて粉砕されたフンが排気となって舞い上がったりする危険があるため使わないでください。
ハクビシンの巣やフンがあった場所は雑巾に消毒液を染みこませて拭き上げます。使用した雑巾は必ず処分してください。キッチンペーパー、新聞紙などで拭いても良いでしょう。
集めたフンを処分する際に使います。すぐにゴミとして出せない場合は消臭タイプのゴミ袋がおすすめです。
逆性石けんは一般細菌に対して強い殺菌力があることが認められています。毒性も低く、害獣駆除のプロも利用しています。
手順
ハクビシンのフンは雑菌の温床です。作業を始める前に汚れてもいい服に着替えましょう。また、フンに直接触れたり吸い込んだりしないよう帽子、ゴム手袋、マスク、ゴーグルも必ず装着してください。
手順1〜4の工程がすべて終わるまで完全防備で作業を行いましょう。
ほうきとちりとりでハクビシンのフンを集めます。少しでもフンが残ったままにすると悪臭や害虫の発生原因となるため、確実に取り除きましょう。掃除機はフンがノズルなどに付着したり、吸い込まれて粉砕されたフンが排気となって舞い上がったりする危険があるため使わないでください。
長期間フン尿を放置し、屋根や天井が腐食しているような場合は抜け落ちる可能性があり危険です。必ず害獣駆除業者に依頼してください。
集めたフンは正しい方法で処分しましょう。フンは可燃ゴミ扱いであることが多いですが、お住まいの自治体ごとに異なります。くわしい処分方法は自治体に確認してください。
フンを取り除いただけでは不十分です。最後は必ずフンのあった場所を消毒してください。殺菌されることで悪臭も改善します。
消毒には殺菌力が高く、医療現場でも使用されている逆性石けんを200~500倍に希釈したものがおすすめです。雑巾に染みこませてフンがあった場所とその周辺をふきあげてください。もしくは、霧吹きで散布して雑巾やキッチンペーパー、新聞紙などで拭いても良いでしょう。
ハクビシンのフンは非常に不衛生です。作業で着た服や手袋、ほうき、ちりとりなどはすべて処分してください。
ハクビシンのフン対策
ハクビシンの一番のフン対策は、ハクビシンを侵入させないことです。ハクビシンは鳥獣保護法によって自治体の許可を得た場合と狩猟以外での捕獲を禁じられています。もしも家の中にハクビシンがすでに侵入している場合は、無断で捕獲・殺傷しないでください。以下の①〜④を徹底してハクビシンの侵入を防ぎましょう。
① 庭やベランダにえさとなるものを置かない
庭にハクビシンがのぼれるような木の足場を作ったり、えさとなるような生ゴミなどを放置したりしないように注意しましょう。
② 侵入経路を特定してふさぐ
ハクビシンの侵入経路を特定し、パンチングメタルと呼ばれる強度の高い金属の網ですき間を埋めましょう。ハクビシンが侵入しないよう、ネジやビスを使ってしっかりふさぐことが大切です。
作業に取り掛かる際は、まず家の中にハクビシンがいないかどうか確認してください。もしも屋根裏などにハクビシンが潜んでいる状態でふさいでしまうと、家の中で餓死、腐敗してしまい処理が大変なことになります。
また、侵入経路をふさぐには建物の知識が必要になります。難しい場合は自力で対処しようとせず、害獣駆除のプロに依頼しましょう。
なお、ハクビシン対策としてフェンスを設置している家庭がありますが、垂直に1メートル以上ジャンプできるハクビシンにとって飛び越えることは簡単であるため、おすすめできません。
③ ハクビシン対策商品を使う
家のすべてのすき間をふさぐことは困難です。市販のハクビシン対策グッズも活用しましょう。
すでにハクビシンが家の中に侵入している場合はにんにく、灯油、木酢液を周辺に置くと効果的です。ハクビシンはこれらのにおいを習性で嫌うため、忌避(きひ)効果が期待できます。他にも、ハクビシンはオオカミの尿のにおいも嫌います。オオカミの尿の成分が入っている「ウルフピー」などの忌避剤を併用すると効果的です。
また、夜行性のハクビシンには青色LEDストロボが有効です。青色LEDストロボをさまざまな場所に設置することでハクビシンが寄り付かなくなる効果が期待できます。ハクビシンに限らず夜行性の動物全般に有効です。
④ 害獣駆除のプロへ依頼する
ハクビシンの駆除は簡単ではありません。家庭内でできるかぎりの対策をしても侵入される可能性はゼロではありません。最善の方法は専門の駆除業者に依頼することです。
とくにフン尿で屋根裏の床などが腐敗している場合は、抜け落ちる可能性があり大変危険です。自分で処理しようとせず、害獣駆除のプロへ依頼してください。